人面黒褐釉花壺
■DATA:高23.4㎝/胴14.9㎝/11世紀~12世紀
現在のカンボディアを中心とする地域に栄えたクメール王国のもとで、9世紀から13世紀頃にかけて、インドの文化に影響を受けたと考えられる、独特の装飾や器形をそなえたクメール陶器が生産されました。10世紀末から12世紀にかけては黒釉陶(こくゆうとう)の陶器の生産もさかんになります。博物館所蔵のこの壺のように、時に表面に人面を表したものも生産されましたが、かなりの希少品です。祭祀にかかわることに使用したという説があります。人面はあとから貼り付けられています。壺のうしろにしっぽのような突起がありますが、穴は開いてなく、装飾でつけたようです。メール陶器は宗教的儀式のため、もしくは王族のためのごく限られたやきものであり、量産化され国外へ輸出されることはありませんでした。そしてクメール王国の崩壊とともに姿を消す運命をたどります。